生かすべき奴は放射線治療しよう
やはり外科医の利権が問題のような気がします。
「見えないメスでがんと闘う」(1)
◎守備範囲広い放射線治療 3本柱の一つ
はじめまして。私は放射線腫瘍医です。といってもピンとこない方が多いかもしれません。放射線腫瘍医は、がんに放射線を照射して治す「放射線治療」を専門とする医師です。放射線治療は手術や薬物療法と並ぶ、がん治療の3本柱の一つです。
厚生労働省の統計によると2020年に亡くなった方は約137万人で、死因の第1位はがんです。最新のがん統計では2人に1人が一生のうちにがんと診断され、男性では4人に1人、女性では6人に1人ががんで亡くなっています。
欧米では全てのがん患者さんのうち6~7割、すなわち3人に2人が放射線治療を受けておられます。一方、日本で放射線治療を受けられるがん患者さんは3割程度というのが悲しき現状です。私は放射線治療が日本のがん治療に貢献できる余地は欧米並みに大きいと思ってます。
放射線治療が広まらない理由について、放射線腫瘍医は「日本のがん治療が手術を中心に組み立てられてきたから」「放射線に対する誤解があり、放射線治療のイメージが悪いから」などと説明することがあります。
しかし私は、放射線腫瘍医によるアピールや啓発活動が足りないという、われわれ自身の問題も理由の一つだと考えています。今回、多くの方々に放射線治療をもっと理解していただき、放射線腫瘍医としての考えや心のうちを伝えようと思い立ちました。
がんの放射線治療のメリットは大きく分けて三つあります。一つ目は、進行がんのため手術できない人、高齢の人、身体機能が低下しているために手術ができない人でも、治癒を目指した治療ができることです。
二つ目は、切らずに治せることです。手術ではがんのみならず、がんが発生した臓器ごと切除することが多いため、臓器の機能や形態の温存ができませんが、放射線治療なら可能です。手術で切除した臓器を再生させることはできませんが、放射線治療ならば臓器の修復も期待できます。
三つ目は「守備範囲」が広いことです。頭の先から足の先まで全身ほとんどの場所で治療を行うことができます。また、早期のがんから進行がん、再発したがん、さらには他の臓器に転移したがんに至るまで治療することが可能です。
このようなメリットを持つ放射線治療について、私の思いと共に、皆さんに伝えることができればと思います。これからしばらく、私の独り言にお付き合いいただければ幸いです。
#見えないメスでがんと闘う ✍️
私の地元の中国新聞では諸事情から全18回の掲載になりましたが、今回の配信では20回全部配信します。
多くの方に放射線治療,放射線腫瘍医のことを知っていただけるようシェアしていただければ嬉しいです。